算数の教え方+受験アドバイス

中学受験生を持つパパ・ママ応援サイト

文章題の教え方から勉強方法、成績の伸ばし方等アドバイスします。

論語に見る孔子の教育法

HOMEアドバイス>論語に見る孔子の教育法

教えない

はく、ふんせずんばけいせず。ヒせずんば発せず。一隅いちぐうぐるに、三隅さんぐうもって反せずんば、すなわふたたびせず。

論語新釈』 宇野哲人 講談社学術文庫 p.184

(意訳)人を教えるには、相手にそれだけの素地が出来上がっていることが必要です。問題が分からないで煩悶しているようでなければ、教えません。何か言いたいけれどどう言えばいいか分からず悩んでいるようでなければ、教えません。一度教えても反応が悪いなら、それ以上教えません。

集団指導型の塾では、算数の授業中、子どもに与えられる時間は1問につき3分程、長くても5分程しかありません。それが終わるとすぐに解説が始まります。与えられた時間で問題の8割から9割解けるような生徒は授業についていくことができますが、中には問題文も読めていななかったり、先の板書を写している生徒もいます。そのような生徒は必然的に授業についてこれなくなり、塾に来ても板書を写すだけ、家に帰って宿題を解くときに、先生の解き方を思い出すのが勉強と勘違いしてしまいます。これでは、塾に通えば通うほど成績は下がっていきます。

問題を教えるには、生徒の側に、それだけの準備ができていないといけません。私が家庭教師をする際は、子どもに十分な時間を与え、どうしても一人では無理なところだけを教え、続きもできるだけ一人でやらせるようにしています。反応が悪ければその問題は保留して前の例題に戻り、類題をたくさんし、完全に理解してからもう一度チャレンジさせます。

また、聞かれない限りは、他の解き方を押し付けたり別解を教えたりすることはありません。灘中に合格するような生徒には、別解を教えれば教えるだけ賢くなる感がありますが、ほとんどの子どもとって、別解は混乱のもとです。6年生の入試に近い時期になると、別解は教えないでくれという子どももいます。自分で思いつかない解き方は、そもそも入試で使えないことが分かっているからです。

しかし、好奇心をはぐくむには、けっしていそいでそれをみたしてやってはいけない。かれの能力にふさわしいいろいろな問題を出して、それを自分で解かせるがいい。なにごとも、あなたが教えたからでなく、自分で理解したからこそ知っている、というふうにしなければならない。かれは学問を学びとるのではなく、それをつくりださなければならない。かれの頭のなかに理性のかわりに権威をおくようなことをすれば、かれはもはや理性をはたらかせなくなるだろう。もはや、他の人々の臆見に翻弄されるだけだろう。

エミール(上)』 ルソー著 今野一雄訳 (岩波文庫)pp.375-376

いいところを誉めて、引き出して、伸ばす

子、人とうたうてくば、必ずこれをはんせしめ、しかのちにこれにす。

論語新釈』 宇野哲人 講談社学術文庫 p.209

(意訳)先生は、人と一緒に歌ってその人が上手だったら、必ずもう一度歌わせ、その後に自分も一緒に歌われた。

例えば歌が上手な子どもがいたとします。親でも先生でも構いません。それを聞いた大人が、「おっ!!うまいな〜。もう一度歌って!」と言います。子どもはやや照れながら、うれしくなってもう一度歌うでしょう。大人は手拍子などを交えて、楽しみながらそれを聞きます。子どもは無事歌い終わり、やや不安げに上気した顔を大人に向けます。

そこで大人が、「やっぱりうまいわ〜!次一緒に歌おう!」と言います。子どもはすっかりうれしくなって、自信満々で、のびのびと一緒に歌を歌ってくれるでしょう。 こんな大人が周りにいれば、子どもはきっと歌うのが大好きになり、その才能を伸ばしていくでしょう。

それにつけても、この箇所を読むたびに、ある残念な先生のことを思い出します。それは、地元で評判という寺子屋風の塾を開いている先生を扱ったニュースのひとコマでした。

小学生の女の子が分数の計算問題を解いています。ノートいっぱいに絵や式を書いて、とても感心です。答えが出た彼女は先生の元に走り、ノートを見せます。しかし、ここからの先生の対応が問題です。 先生はそれが正解がどうかを言わず、「どうやったの?」と解き方を説明させます。女の子は不安げに自分のやり方を説明します。ところが、言葉がつまって上手く説明できません。

そこで先生は女の子のノートに赤ペンで図や式を書きながら、「こういうこと?」と、まるで誘導尋問のように進めていきます。もちろん女の子はうんうんとうなずいています。 そしてその誘導尋問のような説明が正解に到ったところで、「はい、正解!」と言って、先生はマルをあげます。

もちろんその頃には女の子のノートは先生の字で真っ赤。 女の子はマルをもらってうれしいような、しかし半分は釈然としないような顔で帰って行きました・・・。

何よりも先に、マルをあげる

私はこのひとコマを、「何て教え方が下手な先生なんだろう」と、もどかしい思いで見ていました。私なら次のように進めます。子どもが正解を出したら、解き方に関わらず、「おっ!正解!」と、まずマルをあげます。そして次に「どうやったの?」と聞きます。すでにマルをもらってますから、子どもは自信満々に自分のやり方を説明します。

子どもの説明が言葉足らずや不完全であっても、大目に見ます。特に初見の問題やオリジナリティー溢れる解き方の場合は、口出しせずに「すごいな〜」といって感心し、説明が終わったらハナマルをあげます。そして同じやり方で解ける問題を与え、解く力と自信を定着させていきます。

全部子ども自身に書かせる

もう一つ問題があります。私なら子どものノートに説明を書き込んだりはしません。先生がいくら綺麗に解き方を書いたところで、先生の力になるだけで、子どもの力にはなりません。解説は他の紙にやり、子どもには、自分のノートに、自分の言葉で説明を書かせるようにします。もちろん式が不完全でも構いません。次に類題が解ければいいのですから、完璧を求めてはいけません。

先生の説明を聞くだけなら誰でもできます。しかしそれを理解して、もう一度自分で図や式を書くのは難しいものです。ですから、問題の解説も子ども自身に書かせるようにしないといけません。

PAGE TOP

アドバイス