6年生 秋の注意点
志望校別特訓について
夏休み以降、どの塾も志望校別特訓が本格的に始まります。宿題の量が一気に増えますから、普段の宿題で手がいっぱいというご家庭は、志望校別特訓を受講しないか、受講しても単科受講にするか、苦手科目以外は宿題をしない、定期的に休むなどして、宿題の量を調節して下さい。
また、たとえ受講資格があったとしても、現在D判定やC判定である学校の志望校別特訓を受講すると、授業についていけず、かえって成績が下がります。レベルが高すぎて、授業は板書を写すだけ、宿題をしても式を1、2行書けるだけ、解答を写すだけでほとんど終わってしまいます。このような勉強を1ヶ月、2ヶ月も続けると、考える力は無くなり、自信も失い、成績は惨憺たるものになります。
心当たりのあるご家庭は、志望校別特訓のレベルを一つ下げ、まずは現在B判定の学校をA判定にすることに、全力を注いで下さい。第1志望校を目指すのは、その後です。こういう堅実な道を進まない限り、第2志望校にも滑り止めの第3志望校も危うくなってしまいます。
各種テスト
秋から冬にかけて、通常の月1回のテストに加えて、志望校別のテストなど、オプションのテストが一気に増えます。気がついたら、毎週日曜日がテスト、という月もあります。また、通常の授業でもテストが増えます。毎週実力テストや過去問演習があり、復習まで手が回らないテストが、山のようにたまっていきます。
言うまでもないことですが、テストを受けるだけで賢くなるということはありません。テストで解けなかった問題が解けるようになり、その分野を克服して、はじめて賢くなるのです。復習する時間がないのにテストを受けるのは、レストランに行ってわざわざお金を払って料理を食べずに帰るようなものです。時間と労力の無駄であるばかりか、通常の勉強にも支障がきたします。ですから、復習に手が回らないようなオプションのテストは受けないようにし、テストばかりの講座があれば、それも定期的に休むようにして下さい。
また、今さら復習する時間もない過去のテストは、全部捨てて下さい。残しておいても、ストレスになるだけです。捨てたあとに晴れ晴れとした気持ちになってはじめて、どれだけストレスになっていたか分かります。塾のペースでテストを受けて消化不良を起こし、成績を下げるほど本末転倒なことはありません。勉強は塾のためにするのではなく、自分のためにするものです。
ただし1つだけ、テストをたくさん受けるメリットがあります。それは、テストの前日に寝不足だったり、テストの当日にケンカをしたりすると成績が極端に下がる、ということを、いつか親子で身をもって体験できることです。
過去問の勉強
秋になると、そろそろ過去問を実際に解く勉強を始めます。私の生徒の場合、だいたい11月から始めてもらいます。11月は第2志望校、12月1月は第1志望校の過去問を数年分やってもらいます。滑り止めの第3志望校の過去問は、入試1、2週間前で十分です。
ただしこの時期は塾の予定もたくさんあるはずですので、「◯月◯日に◯◯◯◯年度の算数」、「◯月◯日に◯◯◯◯年度の国語」のように、月のはじめに具体的に計画を立て、カレンダーや手帳に記入しておいて下さい。「時間ができたときにやろう」と漠然と考えているだけでは、いつまでたってもその日は訪れません。
また、塾の方でも過去問をやるでしょうから、各教科の担当の先生に、塾で扱う過去問の年度をあらかじめ聞いておき、それ以外の年度の過去問を家でやるようにして下さい。
何年分やるかは、過去問の手応えと、塾の空き時間に応じて決めて下さい。私の生徒の場合は、第2志望校2〜3年分、第1志望校5年分といったところです。
塾の教育相談
この時期になると、そろそろ教育相談が始まります。良い先生に当たれば問題ないのですが、中には1、2時間、延々と説教するだけで、その内容と言えば要するに「私は悪くない、お宅のしつけが悪い」の一点のみ、具体的なアドバイスが一切出来ない先生もいます。
中には、ベテランで評判の先生だと思っていたのに、「私の言うことを聞かないのはお宅の子どもだけ。私の威厳が損なわれ、私のプライドはいたく傷ついている」と平気でのたまう先生もいます。
先生といえども、全員が教育者・人格者である訳ではありません。このような首をかしげたくなるような先生に関しては、くじ運が悪かったとあきらめ、子どもに被害が及ばないように、受験にそれほど熱心でない素振りを見せて、適当にやり過ごして下さい。
受験校は必ず家庭で決める
この時期になると、塾から受験校の推奨パターンが提示されますが、薦められる受験校の多さに驚かされるでしょう。まるで5、6校受験するのが当然かのように薦めてきますが、常識的に考えて、受験校が多ければ多いほど、当日の子どものパフォーマンスは低下します。
私は家庭教師として1年から2年、同じ子どもの勉強を見ていますが、同じ子どもでも、日によってパフォーマンスが違います。例えば、平日の放課後よりも土日の午前中の方が、パフォーマンスが良いです。睡眠を十分とって疲れもなく、頭がスッキリしているからです。夏休みでも後半になる従い、パフォーマンスが悪くなります。疲れが溜まって、考える力がなくなっているからです。このように、当日のコンディションによって、子どものパフォーマンスは極端に上下します。
入試はとても体力を使います。私は1校目の受験後、帰って14時間眠り続け、翌日から風邪を引きました。今の子は14時間も眠る暇もなく、午後受験、翌日の試験となります。4校目、5校目となると、体力・集中力が続くわけがありません。親子で受験の日に寝坊をした、という話も聞きます。
受験校は少ないに越したことはありません。受験校の決定は塾任せにせず、必ずご家庭で責任を持って決めて下さい。理想は3校です。第1志望校と第2志望校、滑り止めの第3志望校です。
成績が下降気味の生徒
成績が下降気味の生徒は、勉強方法をガラッと変えない限り、このまま成績が下がり続けます。復習テストで点を取るための勉強、やり方を覚えるだけの勉強をやめ、入試で点が取れる勉強に早くシフトしないといけません。
そのためには、何度も言いますが、宿題の量を減らし、1問1問時間をかけてじっくり考えることです。
この時期に必要なのは、もう、やり方を覚えることではありません。入試に必要な解き方は全部習っているはずです。この時期に必要なのは、頭に入っているいろいろな解き方を自分でつなぎ合わせ、現実に使えるようにする訓練です。
解き方が分からなければ、図を正確に描いたり、絵を描いたり、グラフを描いたり、表を描いたり、樹形図を描いたり、簡単な数字で考えたり、当てはめで考えたり、言葉を表してみたり、とにかく何でもいいから自分が思いつく限りのことをし、一から自分で解き方を見つける。これが、この時期に必要な勉強です。そしてそういう勉強をするためには、1問あたりにたくさんの時間を与えなればいけないのは、言うまでもありません。
一波乱あっても、・・・。
夏休みの勉強のし過ぎで成績が急に下がる、体調を壊すなどをはじめとして、この時期、いろいろな問題が起こりがちです。
学校や塾でいじめられたり、逆にいじめの犯人にされたり、学校が荒れはじめて子どもに影響が出たり、元気が良すぎて学校で腕を骨折したり、・・・。あるいは、運動会などの学校行事に疲れて、勉強に身が入らなかったり、とにかく毎日が眠くてボーっとしたり、・・・。
何が起こるか分かりませんが、何が起こったとしても、慌てふためくことなく、泰然自若として対応して下さい。親は何もできなくて、ただ嵐が過ぎ去るのを1ヶ月、2ヶ月とただ待つだけのこともあります。中学受験は親の肝っ玉の見せ所です。子どものためにも、何事にも動じない親の立派な態度を見せてあげて下さい。