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中学受験を始める前に

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子どもの健康管理ができていること

遠い私立の学校に通っているため子どもの睡眠時間が7時間を切っている、子どもに3食与えていない、偏食、過食させている・・・。こういう、子どもの健康管理がちゃんとできない親は、中学受験を目指してはいけません。算数で言えば、基本問題も解けないのに応用問題に手をつけるようなものです。

子どもの健康、具体的には、子どもが毎朝すっきり起きて元気に学校へ行っているか、瞳は生き生きと輝いているか、こういうことは、中学受験に限らず、子どもが学生生活を送る間の、最も大切な羅針盤です。

この羅針盤を持たない親は、その時々の気分と、その時々に耳にした情報に振り回され、北を目指すつもりが南に流され、最後には子どもとともに沈没してしまいます。ですから、子どもの健康管理、特に睡眠時間の管理、食事の管理ができない親は、子どものためにも、中学受験を目指してはいけません。

勉強よりも大切なことがある

次に、勉強よりも大切なことがあることを、知っておかなければなりません。

人間を、善い人と悪い人、勉強が出来る人と出来ない人に分類すると、次の4つのタイプに分かれます。ここで、善い人とは、親切で協調性があり、自分の幸せよりも他人の幸せを願う人です。悪い人とは、人を傷つけたり、嘘を言ったり、自分だけの幸せを考える人です。

皆さんが目指すのはもちろんAタイプです。問題はDタイプです。Cタイプはまだ、勉強することによって善い人になる可能性があります。しかし、Dタイプは、天から授けられた才能を自分のためだけに使う、生まれつきの魂が小さすぎる人です。

「人間は無私の献身によって隣人たちの幸福を生み出したり、それを固めたり、また増進したりするためにはたらく時、初めて真の人間、つまり神の似姿になり始める。ただ自分だけのために存在するならば、人間とはいったいなんであろうか。」(ヒルシュ『イスラエルの祈り』)。

幸福論(第一部)』 ヒルティ著 草間平作訳 (岩波文庫) p.327

「あの人は勉強はできるけど人間的にちょっとね・・・」と言われるのは、私達の社会にあっては人間失格の烙印です。勉強はより善い人間になり、より人の役に立つ人間になるためにあります。このことを親も子も肝に銘じて、中学受験を目指して下さい。

もしも受験勉強することによって、人を馬鹿にしたり、ズルをしたり、人を傷つけたりするような子どもになった場合、中学受験はあきらめて下さい。子どもにもあなたにも受験は早すぎました。人間性を歪めてまで続ける価値は中学受験にはありません。

何のために勉強するのか、させるのか。

自我的な向上心は私を疲らせる。しかし私は他の人々の為には向上心を持ち、創見を有し、倦まずにやることができる。

アミエルの日記(三)』 河野与一訳 (岩波文庫) p.226

「仕事は辛いけど、子どものため、家族のためなら頑張れる」という人は多いでしょう。人間は、自分一人のためだけに生きられる動物ではありません。他の人の役に立って、はじめて幸せに生きていくことができます。いくら財産を持っていようと、人の役に立っていない人間ほど不幸なものはありません。

私達が子ども達に勉強させるのは、決して個人的な欲望の実現のためではなく、より善い人になり、より人の役に立ち、まわりの人を幸せにすることで、子ども自身も幸せな人生を送ってほしいからに他なりません。

教育の目標とするところは、善への性向をもつ人間を育て上げることである。

幸福論(第一部)』 ヒルティ著 草間平作訳 (岩波文庫) p.148

学歴

「学歴は必要か、必要でないか」という議論をよく聞きます。いま仮に「学歴」を「学(学力)」と「歴(出身学校)」に分けて考えると、大切なのは「学」であって「歴」はそれに付随するものでしかありません。この主客を転倒して、「学」をおろそかにして「歴」ばかりを求める親は、その必然として、過程よりは成果を、努力よりは数値を、中身よりは外見を求め、算数においては理解よりも丸覚えを、国語においては本文を読まずに解答を書くことを、入試では思考問題より知識問題で点を取ることを、子どもに求めるでしょう。大切なこと、本質的なことを知らずに中学受験に燃える親は、必ずテクニックに溺れ、道を踏み外し、子どもを潰します。

算数の問題で例えると、下の図のように実力の水槽と学歴の水槽があります。水は実力の水槽の方に注ぐべきところを、学歴を求める親にはこの水槽が目に見えず、外側の水槽ばかりに水を注ぐことになります。同様の過ちは普段の勉強でも発生します。実力の水そうの存在を知らない親は、外側の復習テストの水そうばかりに力を注ぎ、テストで点数を取るための安易な子供に強要し、結果、いつまで立っても実力はつかず、自分の過ちにも気づきません。

論語に「文質彬彬ぶんしつひんぴんとして,然る後に君子なり」という言葉があります。「文」は飾り、が「質」は中身です。飾りが中身を超えてはいけません。学歴の議論で言えば、歴=飾りが、学=中身を超えるようであれば、本人はもちろん、周囲の人にも不幸を及ぼします。学歴の「歴」を親の力で授けようとしてはいけません。大切なのは、どこまでいっても「学」です。

伊川いせん先生言ふ、人に三の不幸有り。少年にして高科こうかに登るは、一の不幸、父兄のいきおいりて美官びかんと為るは、二の不幸、高才有りて文章をくするは、三の不幸なり。

(通釈)伊川先生の言に、人に三つの不幸がある。第一は、年若くして優等で進士に及第すること。第二は、父兄の勢力のお陰でよい官職にありつくこと。第三に、秀れた才能があり、かつ文章の上手なことの三つである、とある。

小学 新釈漢文大系(3)』 宇野精一著 明治書院 pp.334-335 

上に述べられている3つ目の不幸は、分からない方も多いでしょう。非常に優秀でかつ弁が立ち、文章も上手に書けるという人は、若い頃から才覚を表しチヤホヤされることで、大成せずに浅薄な人間に終わるということです。

親は特定の志望校を持たない

中学受験を始めるなら、親は特定の志望校を持ってはいけません。子どもを特定の○○中学校に入れたいというのは、親の私欲です。その考えは、受け売りの知識と先入観、子どもが意志を持たないことを前提とし、自分の安心と他人からの称賛をひそかな目的としています。

私欲に駆られた親は、子どもの手に負えない問題集をたくさん買ったり、子どものレベルに合わない宿題まで全部やらせたり、不必要な塾の講座を受講させたり、夜遅くまで勉強をさせたりします。また、子どもの成績が悪かったり、宿題が全部できなかったり、少しでもボーっとしていると、絶えずイライラして子どもを叱り、子どもは心も健康も害します。

子どもが自分のペースで勉強し、自分一人の力で合格できる中学校に行く。これが、子どもにとって最も幸せな道であり、子どものことを尊重している、本当に愛している親が選ぶ道です。子どもを愛していないか、愛情と私欲が区別できていない未熟な親だけが、子どもより先に、子どもより熱心に、特定の志望校を持ちます。

受験パパ・ママ執筆の本やブログは読まない、うのみにしない。

「いやいや、そんなこと言っても、◯◯パパや◯◯ママは親主導で有名中学合格したじゃないか!」そうお怒りの方もいらっしゃるでしょう。

まず言えるのは、親主導の受験が成功するのは、子供の才能が親の才能を遥かに上回る場合だけです。本当に誠実な親や教育者なら、自分の力は微々たるものであることを正直に告白し、優秀な子どもを授かったことを神様に感謝するでしょう。有名アスリートの親、有名大学や有名中学に子どもが合格した親のほとんどが、アドバイスを求められて、「いいえ、私は何もしていません。子どもが一人で勝手に行きました」と答えるのはそのためです。

親に出来るのは、良い環境を与えることだけです。それをすべてが自分の手柄のように言うのは、人間が幼いか、他人の称賛を求めているからに過ぎません。

次に、そういった本やブログには、本人(親)に不都合なことは全く書かれていないし、子どもが失ったものについても書かれていません。また、子どもの内面についても書かれていません。舞台裏を知れば決して真似をしようとは思わないでしょう。

万が一、親主導の受験で子どもが合格した場合、それは親も子どもも人間的に成長させない「不幸な成功」です。あるいは神様に見放された状態といってよく、あとで大災害が待ち構えています。

ごらんください。世間の人はかりそめの損失をなげき、わずかのものを得ようとして苦労し走りまわっていますが、精神的な損害は忘れられ、たまたまやっと気づくときは、もうおそすぎます。

イミタチオ・クリスティ』 トマス・ア・ケンピス著 呉茂一・永野藤夫訳 (講談社学術文庫) pp.215-216

受験や教育関係の書物には、まるで子どもを自分の思い通りに育てられるかのような錯覚を与える本があり、大変危険です。子どもを思い通りにコントロールしようという意志がある限り、あなたの教育は必ず失敗し、子どもを傷つけます。まずはあなたの意図と計画を放棄し、子どものペースにとことんつき合うこと。これが遠いように見えて、最も安全で効率的な道です。

最も知的で寛容な教育とは、子どもが自分自身で経験するのを邪魔しない教育である。

決定版 第二の性 II 体験(下)』  シモーヌ・ド・ボーヴォワール著
 『第二の性』を原文で読み直す会訳 (河出文庫) p.456

理解できない方も多いでしょう。その場合は、まずはご自分の思う道を進んで下さい。そうして全てが行き詰まった後に、もう一度こちらのホームページをお尋ね下さい。その時はじめて理解できるでしょう。子どもが傷つくのは悲しいことですが、子どものためにも、親がまず賢くなる必要があります。

子どものペースで勉強させる

ここに1個の未知の植物の種があるとします。この植物の最適な栽培方法は、発見者や植物学者の頭の中ではなく、種の中にあります。同様に、我が子の最適な教育方法は、親の頭の中や、ましてや他人の頭の中にあるのではなく、我が子の中にあります。そしてそれを見つけられるのは、子どもとも毎日一緒に暮らす親だけです。

多くの受験関係の本が、筆者同等の非常に知的な親と、標準以上の子どもを暗黙の前提としています。ですから、これらの本から得られた教育法を子どもに当てはめようとしても、ほとんどうまく行きません。むしろ、うまく行かないことが幸運であって、不幸にもすべてうまく行った場合は、1人では何もできないひ弱な子どもが出来上がるでしょう。他人の教育法ではなく、子どもの瞳の輝きを注意深く観察し、子どもの中から、子どもに合った、そして自分にも合った、最適な勉強方法を見つけ出して下さい。

自己をはこびて万法を修証するを迷とす、万法すすみて自己を修証するはさとりなり

『正法眼蔵(一)』 道元 (岩波文庫)

子どものレベルに合った塾を選ぶ

以上の前提条件を踏まえて、いよいよ塾選びです。もうお分かりと思いますが、塾は合格実績や子どもや親の志望校で選ぶのではなく、子どもの学力に合った塾を選んで下さい。具体的には、宿題の7割が子ども一人の力でこなせるような塾を選んで下さい。

子どもが一人で勉強して宿題の半分も出来ないというのは、子どもが悪いのではなく、塾が子どものレベルに合っていないだけです。そういう場合は、他の塾や少人数の塾、個別指導の塾を試して下さい。自分のペースで勉強できる環境に子どもを置いてあげない限り、子どもの才能は何一つ伸びません。

また、少人数の塾であっても、子どもによってはレベルが高すぎる場合があります。そういう場合も、「孟母三遷の教え」に習って、諦めず塾を探して下さい。どうしても子どもに合う塾がない場合は、通信教育にするなり、市販の簡単なテキストと、こちらのホームページにあるプリントを使って、家庭で学習するのがいいでしょう。

低学年の間は塾に行かない

低学年の間は、塾に行かなくてもいいです。灘中に合格するような子どもは1年から塾に通わなくても4年からでも必ず合格します。他の学校もしかりです。それでも不安な場合は、各学年に合った簡単なドリルか易しい通信教育の教材をやればいいでしょう。学校の宿題をしっかりやり、あとはたくさん本を読み、夢中に遊ぶことです。

植物の成長に、春には春の、夏には夏の、秋には秋の意味があるように、低学年のうちは低学年の意味があります。小学2年生なら最も2年生らしい2年生に、小学3年生なら最も3年生らしい3年生になることです。低学年のうちから受験生になるのは、春と夏を飛ばして秋の収穫を急ぐようなものです。たとえ花が咲いても、貧弱な花しか咲かないでしょう。

長いあいだ自然のなすがままにしておくがいい。はやくから自然に代わってなにかしようなどと考えてはならない。・・・時間のもちかたをあやまることは、なにもしないでいることよりももっと時間をむだにすることになるということ、そして、へたに教育された子どもは、ぜんぜん教育を受けなかった子どもよりずっと知恵から遠ざかることが、あなたがたにはわからないのだ。

『エミール(上)』 ルソー著 今野一雄訳 (岩波文庫)p.210

父親への忠告

もしもあなたが子どもの中学受験を考えている父親なら、「お金だけを出して勉強は母親に一任」という態度をとらないこと。自分にもパートナーと同等の責任があるのを自覚すること。といって、テストの点数や実力テストの偏差値といった「数字だけを見る」のは最も愚かで最低の態度であって、ちゃんと子どもの宿題に残された努力のあとを見ること、褒めたり励ましたりすること、毎朝の子どもの瞳の輝きに注意すること。精神的感受性を磨いて、勉強の成果ではなく、子どもと妻の精神状態に留意すること。

夫:妻=妻:子ども

また、あなたとパートナーの関係が、パートナーと子ども関係に比例することを知ること。

あなたとパートナーの関係が、パートナーの自主性・自律性を認めないような<支配/依存関係>にあるなら、必然的に、パートナーがあなたをはるかにしのぐ人格者でない限り、パートナーは子どもの自主性を認めず、自分が描いた理想像と過度な献身による逆支配によって、子どもを潰す可能性が高くなります。

逆に、あなたとパートナーの関係が、パートナーの自主性・自律性を認める平等な関係にあるなら、必然的に、あなたのパートナーは子どもの自主性を認めて伸ばす、理想的な教育をほどこすでしょう。

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